世界文学全集に興味はあるけれど、種類がありすぎてどれを選べばいいかわからない。
河出書房新社、新潮社、集英社、光文社古典新訳文庫。
出版社ごとに編集方針も翻訳のスタイルもまったく違うので、自分の読書スタイルに合った全集を選ぶことが大切です。
この記事では、主要4社の世界文学全集・シリーズを比較しながら、それぞれの特徴と各社のおすすめ巻を計11冊厳選して紹介します。
読み終える頃には、あなたにぴったりの全集と最初の1冊がきっと見つかるはずです。
世界文学全集の選び方おすすめポイント3選

世界文学全集を選ぶとき、最初に確認しておきたいのが「何を目的に読むか」です。
同じ世界文学全集でも、出版社によって収録作品の範囲や翻訳のスタイルはまったく異なります。
以下の3つのポイントを押さえると、自分に合った全集が見つかりやすくなります。
- 収録地域の幅:西洋中心か、アジア・アフリカ・南米も含むか
- 翻訳の新しさ:旧訳の格調か、現代語の読みやすさか
- 入手のしやすさ:新刊で揃うか、古書を探す覚悟が必要か
たとえば新潮世界文学は西洋の文豪をとことん深掘りした全集なので、ドストエフスキーやトルストイを全作品読みたい人には最適です。
一方、ラテンアメリカやアフリカの作品にもふれたいなら、池澤夏樹が個人編集した河出書房新社の全集が圧倒的に向いています。
翻訳の読みやすさを最優先するなら、光文社古典新訳文庫が現代語訳で刊行を続けており、1冊ずつ手に入ります。
まずはこの3軸で自分の優先順位を決めてから、以下の出版社別おすすめを読み進めてみてください。
河出書房新社の世界文学全集おすすめ3選

河出書房新社は2007年から2011年にかけて、池澤夏樹=個人編集 世界文学全集(全30巻)を刊行しました。
従来の全集が西洋中心だったのに対し、この全集はアジア、アフリカ、中南米の文学を積極的に取り上げた点が画期的です。
第64回毎日出版文化賞(企画部門)を受賞し、編者の池澤夏樹は朝日賞も受けています。
カジュアルな装丁で、それまでの世界文学全集にあった重厚なイメージを刷新したのもこの全集の功績です。
- 『オン・ザ・ロード』:全集のオープニングを飾ったケルアックの代表作
- 『存在の耐えられない軽さ』:クンデラが問う「軽さ」と「重さ」の哲学小説
- 『精霊たちの家』:ラテンアメリカ文学の傑作、一族三代の物語
ジャック・ケルアック『オン・ザ・ロード』(河出書房新社)
池澤夏樹=個人編集 世界文学全集の第1巻に選ばれた作品です。
1957年にアメリカで出版されたこの小説は、ビート・ジェネレーションの聖典として世界中の若者に読みつがれてきました。
主人公サル・パラダイスが、破天荒な友人ディーン・モリアーティとともにアメリカ大陸を車で横断する物語です。
青木日出夫訳を採用しており、ケルアック特有のリズミカルな文体が日本語でも生き生きと伝わります。
世界文学全集の最初の1冊にこの作品を置いた池澤夏樹の意図には、「文学は書斎で読むものではなく、路上に出るもの」という宣言が込められています。
とばり全集の1巻目がケルアックって、それだけでこの全集の攻めた姿勢がわかります。
ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』(河出書房新社)
チェコ出身の作家クンデラが、プラハの春を背景に書いた長編小説です。
人生は一度きりで、やり直しがきかない。
だからこそ、すべてが耐えがたいほど軽いのか、それとも重いのか。
外科医トマーシュとテレザ、画家サビナの三人の男女を通じて、愛と政治と自由をめぐる哲学的な問いが展開されます。
池澤夏樹は「20世紀後半の最も重要な小説のひとつ」としてこの全集に収録しました。
西永良成による新訳はフランス語版に基づいており、従来のチェコ語版訳とは異なるニュアンスが楽しめます。



読後に「軽さ」と「重さ」のどちらを選ぶか、しばらく考えこんでしまう小説です。
イサベル・アジェンデ『精霊たちの家』(河出書房新社)
チリの作家アジェンデが、祖国のクーデターを背景に描いた一族三代の大河小説です。
マジック・リアリズムの手法で、超自然的な出来事と南米の激動の歴史が溶け合うように語られます。
透視能力をもつ祖母クラーラ、専制的な地主エステーバン、革命に身を投じる孫娘アルバ。
三世代の女性たちが、それぞれの時代と格闘しながら生きる姿が鮮烈です。
ガルシア=マルケスの『百年の孤独』と並ぶラテンアメリカ文学の金字塔として、この全集で読める意義は大きいです。



クラーラおばあちゃんの透視能力が当たり前のように描かれるのが、マジック・リアリズムの醍醐味です。
新潮社の世界文学おすすめ3選


新潮社は1927年に日本初の「世界文学全集」を刊行した出版社です。
1968年から1972年にかけて刊行された新潮世界文学(全49巻)は、西洋の「文豪」を徹底的に深掘りした構成が最大の特徴です。
フランス文学に10作家17巻、ロシア文学に3作家12巻を割いており、ドストエフスキーに6巻、トルストイに5巻を費やすという圧倒的な厚みがあります。
現在は絶版のため古書での入手になりますが、新潮文庫で個別に読める作品も多いので、文庫版から入るのも手です。
- 『ドストエフスキー全集』:6巻を費やして代表作をすべて収録
- 『失われた時を求めて』:プルーストの大作を鈴木道彦訳で通読できる
- 『変身』:カフカの短編から長編までを1冊で味わえる
ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(新潮文庫)
新潮世界文学の中核を担ったのがドストエフスキーです。
全集では6巻にわたって主要作品が収録されていますが、その頂点に立つのがこの『カラマーゾフの兄弟』です。
父親殺しの謎を軸に、信仰・理性・欲望・自由をめぐる兄弟たちの葛藤が描かれます。
原卓也訳の新潮文庫版は、全集版と同じ訳文で現在も入手可能です。
上中下の3巻構成で、読みごたえは十分ですが、ドストエフスキーの語りに引きこまれると時間を忘れて読み進められます。



イワンの「大審問官」の章だけでも、世界文学を読む意味を教えてくれます。
マルセル・プルースト『失われた時を求めて』(集英社文庫ヘリテージシリーズ)
20世紀フランス文学の最高峰とも呼ばれる長大な小説です。
新潮世界文学では3巻にわたって収録されていましたが、現在は鈴木道彦訳の集英社文庫版(全13巻)で通読できます。
マドレーヌを紅茶に浸した瞬間、幼少期の記憶が一気によみがえるあの有名な場面は、第1巻『スワン家のほうへ』に登場します。
記憶と時間をテーマに、19世紀末から20世紀初頭のフランス社交界が緻密に描かれます。
全巻読破は大きな挑戦ですが、まずは第1巻だけ読んでみるのがおすすめです。



マドレーヌのお菓子を食べるたびにプルーストを思い出すようになりました。
フランツ・カフカ『変身』(新潮文庫)
ある朝、目が覚めると自分が巨大な虫に変わっていた。
文学史上もっとも有名な「書き出し」のひとつを持つカフカの中編小説です。
新潮世界文学ではカフカの長編・短編をまとめて1巻に収録していましたが、この『変身』単体なら新潮文庫版で気軽に読めます。
100ページに満たない短さながら、家族の関係がじわじわと崩壊していく過程は息が詰まるほど緊迫感があります。
世界文学全集に手を出すのが不安な人は、まずこの1冊から試してみてください。



僕は大学のとき初めて読んで、「これは自分のことだ」と思いました。
集英社の世界文学全集おすすめ2選


集英社は複数の世界文学全集を刊行してきた出版社です。
なかでも『集英社ギャラリー 世界の文学』(全20巻、1989〜1991年)は、解説の充実度で他社を圧倒しています。
古代ギリシアから現代まで、美しい装丁と丁寧な巻末解説で世界文学を体系的に学べるシリーズです。
また1965年から刊行された『世界の文学』(全38巻)は、本邦初訳となる作品を多数収録しており、日本の翻訳文学史に残る仕事を残しました。
- 『百年の孤独』:ラテンアメリカ文学の最高傑作、マコンドの一族の物語
- 『罪と罰』:ドストエフスキーの代表作、人間の罪と救済を描く
ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』(新潮社)
架空の村マコンドを舞台に、ブエンディーア一族の七世代にわたる栄枯盛衰を描いた長編小説です。
1967年に出版されると世界中で爆発的に読まれ、ガルシア=マルケスは1982年にノーベル文学賞を受賞しました。
集英社の世界文学全集でも早くから収録され、日本語で読めるラテンアメリカ文学の代表格となりました。
現在は鼓直訳の新潮社版で入手できます。
空を飛ぶ絨毯、降り続ける雨、繰り返される名前。
現実と幻想の境界が消えていく読書体験は、ほかのどの小説でも味わえません。



登場人物の名前が同じなので系図を手元に置いて読むのがおすすめです。
ドストエフスキー『罪と罰』(光文社古典新訳文庫)
貧しい大学生ラスコーリニコフが、「非凡な人間には法を踏みこえる権利がある」という理論に取り憑かれ、高利貸しの老婆を殺害します。
犯行後の心理描写が凄まじく、読んでいるこちらの良心まで揺さぶられる小説です。
集英社ギャラリーではロシア文学巻に収録されていますが、いま読むなら亀山郁夫訳の光文社古典新訳文庫版が読みやすくておすすめです。
亀山訳はリズムを重視した現代的な文体で、初めてドストエフスキーに挑戦する人のハードルを大きく下げてくれます。
上下2巻で、一気読みしやすいボリュームです。



亀山訳で読んだ『罪と罰』がきっかけで、ドストエフスキーにのめりこむ人は多いです。
光文社古典新訳文庫のおすすめ世界文学3選


2006年に創刊された光文社古典新訳文庫は、「いま、息をしている言葉で」をコンセプトに、古典名作を現代の読者にも読みやすい訳文で届けるシリーズです。
亀山郁夫訳の『カラマーゾフの兄弟』がミリオンセラーになったことで一躍注目されました。
全集のように巻数が決まっているわけではなく、1冊ずつ独立して買えるのが最大の利点です。
ページ脚注の充実、読みやすい現代語訳、手に取りやすい文庫サイズ。
世界文学全集を「1冊ずつ」集めたい人におすすめのシリーズです。
- 『カラマーゾフの兄弟』:亀山郁夫訳でミリオンセラーになった現代語訳の金字塔
- 『嵐が丘』:小野寺健訳で生まれ変わった英国文学の傑作
- 『ゴリオ父さん』:バルザック「人間喜劇」の代表作を新訳で
ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(光文社古典新訳文庫)
光文社古典新訳文庫の看板作品であり、シリーズの知名度を一気に押し上げた翻訳です。
亀山郁夫訳は全5巻で、従来の硬い訳文とは一線を画す、流れるような現代語で読めます。
ドミートリー、イワン、アリョーシャの三兄弟と父フョードルの愛憎劇は、読みはじめると止まりません。
各巻の巻末には亀山自身による詳細な解説が付いており、作品理解を助けてくれます。
新潮文庫の原卓也訳と読み比べるのも楽しい体験です。



亀山訳で読んで、原卓也訳で読み返す。同じ作品なのに印象がまるで違うのが翻訳文学のおもしろさです。
エミリー・ブロンテ『嵐が丘』(光文社古典新訳文庫)
イングランド北部の荒野を舞台に、ヒースクリフとキャサリンの激しい愛憎を描いた長編です。
恋愛小説と呼ぶにはあまりにも暗く、ゴシック小説と呼ぶにはあまりにも人間臭い。
ジャンルの枠を超えた特異な作品として、出版から170年以上経ったいまも読みつがれています。
光文社古典新訳文庫版は小野寺健訳で、重厚なヨークシャー方言の雰囲気を日本語に見事に移し替えています。
上下2巻で、世界文学全集で英国文学を読むならまずこの1冊を推します。



ヒースクリフの復讐劇がえげつなさすぎて、読んでいて手が震えます。
バルザック『ゴリオ爺さん』(光文社古典新訳文庫)
バルザックが構想した壮大な連作群「人間喜劇」の代表作です。
パリの下宿屋を舞台に、娘たちへの無私の愛に生きるゴリオ老人と、野心に燃える青年ラスティニャックの対照的な人生が交差します。
19世紀パリの社交界、階級社会、金銭至上主義が容赦なく描かれており、いま読んでも古さを感じません。
光文社古典新訳文庫版は中村佳子訳で、バルザック特有の長い描写もすいすい読めます。
フランス文学に最初にふれるなら、プルーストよりもまずこの1冊からがおすすめです。



ラスティニャックの野心は、現代の就活生にも通じるところがあるかもしれません。
本をお得に効率よくインプットするコツ2選


世界文学全集を揃えるとなると、費用もスペースもかなり必要です。
そこで活用したいのが、AmazonのAudibleとKindle Unlimitedです。
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通勤や家事の合間に、世界文学の名作を「耳で読む」ことができます。
Audibleではドストエフスキーやカフカなど、この記事で紹介した作品の多くが聴き放題の対象です。
プロのナレーターによる朗読は、翻訳文学のリズムをまた違った角度から楽しませてくれます。
30日間の無料体験があるので、まずは1冊試してみてください。
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光文社古典新訳文庫の多くのタイトルがKindle Unlimitedの読み放題対象になっています。
月額980円で、世界文学の古典を何冊でも読めるのは驚くほどお得です。
電子書籍なら場所もとらないので、全集を集めるスペースがない人にもぴったりです。
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世界文学全集を読む順番おすすめガイド


世界文学全集は分量が多いので、読む順番に迷う人も多いはずです。
結論として、「短い作品から長い作品へ」「読みやすい訳から格調ある訳へ」と進むのがもっとも無理のないルートです。
以下のテーブルに、この記事で紹介した11冊を読みやすさ順に並べました。
| ステップ | 作品 | 目安時間 | おすすめ訳 |
|---|---|---|---|
| 1 | 『変身』 | 2時間 | 新潮文庫 |
| 2 | 『ゴリオ爺さん』 | 5時間 | 光文社古典新訳文庫 |
| 3 | 『罪と罰』 | 8時間 | 光文社古典新訳文庫 |
| 4 | 『嵐が丘』 | 8時間 | 光文社古典新訳文庫 |
| 5 | 『オン・ザ・ロード』 | 8時間 | 河出書房新社 |
| 6 | 『存在の耐えられない軽さ』 | 10時間 | 河出書房新社 |
| 7 | 『精霊たちの家』 | 12時間 | 河出書房新社 |
| 8 | 『百年の孤独』 | 12時間 | 新潮社 |
| 9 | 『カラマーゾフの兄弟』 | 20時間 | 光文社古典新訳文庫 |
| 10 | 『失われた時を求めて』 | 100時間+ | 集英社文庫 |
まずはカフカの『変身』で世界文学の空気にふれ、光文社古典新訳文庫で読みやすい訳に慣れてから、河出書房新社や新潮社の全集に進むのがスムーズです。
もちろん、気になった1冊からいきなり手に取るのも立派な読書です。



読む順番はあくまで目安なので、ピンときた作品からどうぞ。
まとめ


世界文学全集は、出版社ごとに個性がまったく異なります。
多様な地域の文学にふれたいなら河出書房新社の池澤夏樹編、西洋の文豪を深掘りしたいなら新潮社、体系的に学びたいなら集英社ギャラリー、読みやすさ重視なら光文社古典新訳文庫。
自分の読書スタイルに合った全集を選ぶことで、世界文学への入り口はぐっと広がります。
この記事で紹介した11冊は、どれも世界文学の扉を開く最初の1冊にふさわしい作品ばかりです。
まずは気になった1冊を手に取って、世界文学の豊かな世界に踏み出してみてください。
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