人と会った後も、返事の仕方や相手の顔色が気になってしまう。少し離れたいけれど、嫌われるのも寂しくなるのも怖い。そんなとき、本まで自分を変えるための課題にしなくてよいと思います。
付き合いの距離をゆるめたいなら『人間関係を半分降りる』、断り方を考えたいなら『アサーション入門』が候補です。職場のすれ違いには『他者と働く』、聞き役ばかりで疲れたときには『聞く技術 聞いてもらう技術』もあります。
この記事では、これまで2,000冊以上の本を読んできたとばりが、人間関係に疲れた時に読む本を12冊紹介します。友人・職場・家族など、いま気になっている関係と、本が扱う内容を見比べながら、読みたい一冊を探してみてください。
1位:『人間関係を半分降りる』(鶴見済)
『人間関係を半分降りる』は、つながりを全部手放さず、親密さを少しゆるめるという発想の本です。友人や家族と離れたい気持ちがあっても、縁を切りたいわけではない。そんな迷いから読めます。
鶴見済が、自分の経験を交えながら友人・家族・恋人との関係をたどります。狭い仲間内での力関係や、一つの関係に期待が集まりすぎる窮屈さが、身近な言葉で書かれています。
友人とはいつも一緒、家族なら何でも分かるはず。そうした前提をいったん離れ、外にもつながりを持つ考え方へ進むのが、この本の面白さです。付き合いを続けるか終えるかの二択とは、違う景色が見えてきます。
距離を置くことに後ろめたさがある人にすすめたい一冊です。紹介している商品は単行本版なので、増補された文庫版を探している方は、版の違いを確かめて選んでください。
2位:『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健)
人の評価が気になって、自分の希望を後回しにしてしまう。『嫌われる勇気』は、自分が引き受けることと、相手に委ねることを考えたいときの候補です。
岸見一郎と古賀史健が、哲人と青年の対話でアドラー心理学の考え方を紹介します。青年は素直に納得するばかりではなく、反発や疑問をぶつけるので、読者も自分の引っかかりを重ねながら読めます。
中心となる「課題の分離」は、相手がどう評価するかまで自分で決めようとしない、という視点です。誰かの期待に応えることが当たり前になっていると、自分は何を選びたいのか、立ち止まって考えたくなります。
承認されたい気持ちと、自分の選択を見つめ直す本としてどうぞ。強い言い切りもあるため、すべてを自分に当てはめなくてかまいません。相手を気にかけないことや、必要な責任を放り出すこととは分けて読みたいです。
3位:『友だち幻想』(菅野仁)
『友だち幻想』は、親しい相手でも、全部は分かり合えなくてよいと考える入口になります。友人と意見が違っただけで、関係そのものが不安になる方に手に取ってほしい新書です。
社会学者の菅野仁が、「みんな仲良く」という身近な言葉から、人とのつながりを考えていきます。中高生に向けた平易な文章ですが、大人の友人付き合いや職場にも重なる問いがあります。
気持ちの通じ合う関係だけで、生活のすべてが成り立つわけではありません。価値観が違う人とも同じ場所で過ごす。そのための距離や作法を考えるところに、単なる友達づくりの本とは違う読み応えがあります。
仲良くしなければ、というプレッシャーをほどきたい人に向いています。話し方を練習するより先に、友人関係に何を求めていたのかを、ゆっくり考えたいときの一冊です。
4位:『わかりあえないことから』(平田オリザ)
『わかりあえないことから』は、伝わらない相手と、どう対話を始めるかを考える本です。きちんと説明したつもりなのに、話がかみ合わない。そんな経験が続くときに読んでみてください。
劇作家・演出家の平田オリザが、演劇や教育での経験をもとに、コミュニケーションを捉え直します。上手に話せることだけを目指すのではなく、背景の違う人が言葉を交わすことに目を向けます。
同じ言葉でも、その人が置かれた状況や経験によって意味はずれます。察してくれるはず、と期待する会話から、何を前提に話しているのかを確かめる対話へ。その違いを考えられるのが本書の魅力です。
理解することと、同じ意見になることを分けて考えたい人におすすめです。すぐ使える返答集より、職場や身近な相手とのすれ違いを、別の角度から眺めたい方に合います。
5位:『人間関係の疲れをとる技術』(下園壮太)
人付き合いそのものより、終わった後も嫌な場面を思い返してしまう。『人間関係の疲れをとる技術』は、やり取りの後に残る疲れや感情に目を向ける本です。
自衛隊でメンタルヘルス教育に携わった下園壮太が、対人関係で消耗する場面を取り上げます。相手に合わせるための会話術より、自分の中で負担が積み重なっていく過程に関心を向けています。
相手はこうするべきだった、自分はもっとできたはずだ。そうした期待と感情が絡んだ場面を、著者の考え方に沿って振り返れます。相手の言動だけに目が向いていたときとは、読みたい箇所が変わるかもしれません。
会話が終わっても気持ちが休まらない人の候補に。書かれた方法を全部試す課題にせず、今の自分に近い場面を探す読み方でもよいと思います。
6位:『アサーション入門』(平木典子)
『アサーション入門』は、言いたいことを飲み込む癖と、率直に伝えることの間を考える新書です。断れずに引き受け、後になって苦しくなる方に、まずすすめたい一冊です。
平木典子が、自分も相手も大切にする自己表現を紹介します。我慢する表現と相手を押し切る表現を見比べながら、自分の気持ちをどう扱うかが見えてきます。
相手の都合だけでなく、自分の希望も言葉にしてみる。そのうえで、相手には違う考えがあるかもしれないと受け止める。上手な言い回しで必ず了承を得る技術とは違うところが、大事だと感じます。
断ることや頼むことを、具体的に考えたい人に向いています。集団の空気や関係全体を考える本よりも、日々のやり取りから読み始めたいときに選びやすいです。
7位:『聞く技術 聞いてもらう技術』(東畑開人)
いつも人の話を聞いているのに、自分の話をする番はない。『聞く技術 聞いてもらう技術』は、聞き役の自分にも、話を聞いてもらう場所があるかを問いかける本です。
臨床心理士の東畑開人が、聞くことと聞いてもらうことを、ひと続きのものとして考えます。相手を理解する技術を増やすだけでは届かない、関係の支え合いが話の中心です。
時間と場所を決めてもらう、正直でいるなど、話す側・聞く側の小さな工夫も登場します。聞けない自分を責める前に、誰かに話せているかを振り返る視点が、本書らしいところです。
相談されるばかりで疲れている人に読んでほしい一冊です。もっとよい聞き手にならなければ、と頑張るためではなく、自分も関係の中で支えられてよいのだと考えるきっかけになります。
8位:『「空気」を読んでも従わない』(鴻上尚史)
『「空気」を読んでも従わない』は、その場の雰囲気に従うのが当然、という感覚を考え直す本です。断れば仲間から外れるかもしれない、と気を張っている方の候補になります。
鴻上尚史が、「世間」と「社会」という言葉から、日本の集団のあり方を説明します。年齢や仲間意識にまつわる暗黙のルールを、身近な例からたどれる岩波ジュニア新書です。
一つの集団の常識が、世の中すべての常識に見えてしまう。そんな窮屈さに対し、複数の居場所を持つことにも話が広がります。自分の弱さだけで説明していた悩みを、集団の側から眺められます。
学校や職場の同調圧力について考えたい人におすすめです。空気を無視して衝突するためではなく、どの期待に応えたいのか、自分で考える余地を持つために読めます。
9位:『他者と働く』(宇田川元一)
『他者と働く』は、職場で正論を伝えても、相手が動いてくれない場面から読める組織論です。個人の相性だけでは説明しきれないすれ違いを、仕事の関係として考えたい方に向いています。
経営学者の宇田川元一が、立場によって物事の見え方が異なることを、ナラティヴという考え方から説明します。お互いが自分なりの筋道を持っていると捉えると、対立の見え方も変わってきます。
同じ目標を掲げていても、担当や部署が違えば、優先したいことは一致しません。相手の性格を決めつける前に、どんな事情からその判断が出てくるのかを探る。本書の対話は、そうした仕事の前提に踏み込みます。
部署間の壁や、職場で繰り返す衝突を考えたい人にすすめます。友人との付き合い方よりも、役割や組織の中で生じる問題を扱う本を探しているときに選んでください。
10位:『自分の小さな「箱」から脱出する方法』(アービンジャー・インスティチュート)
『自分の小さな「箱」から脱出する方法』は、相手の欠点ばかりが目に入るときの、自分の見方を考える本です。職場と家庭をめぐる物語の中で、自己正当化というテーマをたどります。
著者はアービンジャー・インスティチュート。相手を一人の人として見るのではなく、自分を邪魔する存在として扱ってしまう状態を、「箱」というたとえで描きます。抽象的な理論だけより、場面を追って読みたい方に合います。
自分の行動には事情があると考える一方で、相手の行動は性格のせいにする。そうした見方の偏りを、登場人物のやり取りから考えられます。相手を変える手順より、自分がどう相手を見ていたかに焦点がある本です。
やり取りを振り返る余裕があるときにどうぞ。受けている不当な扱いまで、自分の見方の問題として引き受ける必要はありません。本の考え方を、どんな関係にも一律に当てはめずに読みたいです。
11位:『自分の親に読んでほしかった本』(フィリッパ・ペリー)
『自分の親に読んでほしかった本』は、子どもとの関わりに、自分が育った家庭の経験がどう表れるかを考える本です。題名から親への不満を扱う本を想像しがちですが、中心は親子の関係と子育てにあります。
心理療法士のフィリッパ・ペリーが、子どもの感情の受け止め方や、親自身の反応を見つめます。子どもを思い通りに動かすコツを増やすより、日々のやり取りの中で関係を育てることに目を向けます。
子どもの言動に強く反応したとき、自分も同じように扱われた経験はなかったか。目の前の出来事と過去の感情がつながる場面を考えられます。親を一方的に責めるためでも、自分を責め続けるためでもない読み方をしたいです。
子育て中のすれ違いや、世代をまたぐ関わりを考えたい人におすすめです。自分の親との関係に悩んでいる方も、和解しなければいけない本として受け取らず、関心のあるところから読んでみてください。
12位:『孤独と不安のレッスン』(鴻上尚史)
人と離れると寂しいけれど、一緒にいると疲れてしまう。『孤独と不安のレッスン』は、ひとりになる時間と、取り残される不安を考えたいときの一冊です。
鴻上尚史が、自身の経験も交えて孤独や不安について語ります。付き合いを上手にこなす会話術よりも、自分が何を怖がり、どんなつながりを求めているのかを考えるエッセイです。
周囲から外れないようにすることと、自分の時間を持つことは、いつも同じ方向には進みません。ひとりでいることをすべて悪いものと決めつけず、孤独との付き合いを考えるところに、本書の読みどころがあります。
距離を置いた後の寂しさまで気になる人の候補にしてください。『「空気」を読んでも従わない』が集団の圧力を考える本なら、こちらは自分の内側の不安に目を向けたいときに選べます。
人間関係の本を音声や電子書籍で読む

文字を追う気分ではない日は音声で、気になる箇所を確かめたい日は電子書籍で。サービスの対象に含まれる本があれば、いつもの読み方とは別の選択肢になります。
Audibleで耳から考え方にふれる

文字を読むより、声で聞く方が入りやすいときはAudibleも候補になります。
なぜなら、朗読を聴きながら本の内容にふれられるからです。対象のプランと作品で利用できる範囲が異なるため、登録前に作品ページを見てください。
たとえば、気になる本のサンプルを聴くと、声や速さが自分に合うかを確かめられます。今回の12冊すべてが、聴き放題の対象とは限りません。
声で聞きたい一冊が見つかったら、収録範囲と料金を確認して選んでみてください。ほかの候補はAudibleで聴ける教養本のおすすめでも紹介しています。
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Kindle+で対象本の文章を確かめる

読みたい本が対象に含まれているなら、Kindle+で読む方法もあります。
なぜなら、対象の電子書籍を手元の端末で読めるからです。Kindleストアにある本すべてが、読み放題に含まれるわけではありません。
たとえば、まず試し読みで文章の調子を確かめ、続きが気になった本についてKindle+の対象表示を見てみてください。巻や版が違うと、対象かどうかも変わることがあります。
何冊読めるかを目標にせず、いま読みたい本と月額料金を比べて選ぶのがよいと思います。
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人間関係に疲れた時に読む本のよくある質問

本を選ぶときに迷いやすい点をまとめました。いまの関係をどうするか、急いで結論を出す必要はありません。
人付き合いを少し離れて、暮らしの持ち方も考えたいときはミニマリストのおすすめ本を。ひとりで出かける気分になったら、一人旅におすすめの本も候補になります。
まとめ いま気になっている関係から一冊を選ぶ

順位は当サイトの選書です。上位から順に読む必要はないので、いま気になる場面に近い一冊を探してみてください。
| いま気になる場面 | 候補の本 | 本で考えられること |
|---|---|---|
| 友人や家族との距離が近すぎる | 人間関係を半分降りる/友だち幻想 | 親密さや、分かり合うことへの期待 |
| 人の評価や集団の空気が気になる | 嫌われる勇気/「空気」を読んでも従わない | 他人に委ねることと、集団の暗黙のルール |
| 断れない・いつも聞き役になる | アサーション入門/聞く技術 聞いてもらう技術 | 自分の希望を伝えること、話を聞いてもらうこと |
| 職場で話がかみ合わない | わかりあえないことから/他者と働く | 言葉の前提や、立場による見え方の違い |
| 子どもへの反応を振り返りたい | 自分の親に読んでほしかった本 | 育った家庭の経験と、今の親子関係 |
12冊の違いを一覧にしました。おすすめ度は、この記事の目的に照らした当サイトの目安で、購入者の評価ではありません。
| 順位 | 書名 | 著者 | 種類 | 読みたい場面 | おすすめ度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 人間関係を半分降りる | 鶴見済 | エッセイ | 親しい人との距離をゆるめたい | 特におすすめ |
| 2 | 嫌われる勇気 | 岸見一郎・古賀史健 | 心理学の対話 | 他人の評価を背負いすぎる | おすすめ |
| 3 | 友だち幻想 | 菅野仁 | 社会学の新書 | 友人と分かり合うことに疲れた | 特におすすめ |
| 4 | わかりあえないことから | 平田オリザ | 対話を考える新書 | 説明しても伝わらず困っている | おすすめ |
| 5 | 人間関係の疲れをとる技術 | 下園壮太 | 対人関係の実用書 | やり取りの後も疲れが残る | おすすめ |
| 6 | アサーション入門 | 平木典子 | 自己表現の入門書 | 我慢せずに断りたい・頼みたい | 特におすすめ |
| 7 | 聞く技術 聞いてもらう技術 | 東畑開人 | 聞くことの新書 | いつも聞き役になっている | おすすめ |
| 8 | 「空気」を読んでも従わない | 鴻上尚史 | 集団を考える新書 | 集団の雰囲気に合わせてしまう | おすすめ |
| 9 | 他者と働く | 宇田川元一 | 組織論 | 部署や立場の違いで衝突する | おすすめ |
| 10 | 自分の小さな「箱」から脱出する方法 | アービンジャー・インスティチュート | 物語形式の自己啓発書 | 相手への見方を振り返りたい | おすすめ |
| 11 | 自分の親に読んでほしかった本 | フィリッパ・ペリー | 親子関係・子育て | 子どもとの関わりを考えたい | おすすめ |
| 12 | 孤独と不安のレッスン | 鴻上尚史 | エッセイ | 距離を置いた後の寂しさが気になる | おすすめ |
本に書かれた考え方を、全部自分の正解にしなくても大丈夫です。今の気持ちに近い言葉や、別の見方に出会える一冊を、無理のないところから開いてみてください。
